先日、お店のお菓子コーナーを歩いていた時のこと。あるパッケージと目が合い、気づけば吸い込まれるように買い物かごへ入れていました。
それが、日清シスコの**「ココナッツサブレ」。
しかも、今大人気のパペットキャラクター「スンスン(PUPPET SUNSUN)」**とのコラボパッケージだったのです。あのぽわぽわとした青い姿と、レトロ可愛い世界観がサブレの佇まいにマッチしすぎていて、抗えませんでした(笑)。
執筆の合間にあの絶妙なサクサク感と甘じょっぱさを楽しみながら「そういえば、ココナッツサブレって一体いつからあるんだろう?」と一つの疑問が湧いできました。
調べてみると、そこには1枚のお菓子を通して日本人の「大衆心理」を掴み続けてきた、驚くべき歴史と企業の仕掛けが隠されていました。
誕生は1965年。なぜ「ココナッツ」だったのか?
ココナッツサブレが誕生したのは、今から60年以上も前の1965年(昭和40年)。当時は「シスコ製菓(現:日清シスコ)」という会社から発売されました。
半世紀以上も前ということに驚きますが、さらに面白いのは「なぜ当時、ココナッツだったのか?」という点です。
1965年といえば、日本は高度経済成長期の真っ只中。前年の1964年には「海外旅行(ハワイ旅行)の自由化」が始まり、日本中に空前の「南国・トロピカルブーム」が巻き起こっていました。
当時の日本人にとって、ココナッツは単なる果物ではなく、「まだ見ぬ異国、憧れの南国」を象徴する最先端のトレンドだったのです。
人間には「手軽に非日常や憧れを疑似体験したい」という強い心理があります。
ココナッツサブレは、日常のおやつという身近な存在でありながら、一口食べれば「最先端の南国気分」を味わえるという、当時の大衆心理を完璧に捉えたイノベーション商品だったわけです。
そもそも「サブレ」って何だろう?
ちなみに「サブレ」の由来にも諸説あります。
フランスの「サブレ(Sablé)」という町で作られたのが発祥という説のほか、フランス語でサブレには「砂をまく・砂で覆う」という意味もあります。
バターと小麦粉を混ぜ合わせる時の、あの独特の「砂のようにもろもろと崩れる質感」が、あのサクサク食感の由来です。表面にうっすらと刻まれた網目のような模様も、発売当時から変わらない「西洋のアンティーク調の絵柄」がベースになっており、ここにも当時の「洋風なものへの憧れ」の心理が刻まれています。
「憧れ」から「安心」、そして「癒やし」への心理的シフト
この商品の最大の凄さは、時代とともに「買い手が感じる心理的価値」を変化させて生き残ってきたことです。
1965年(発売当時): 「最先端の、異国の味への憧れ」
昭和後半〜平成: 「いつ食べても変わらない安心感」
2026年(現代): 「スンスンコラボに代表される、日常の癒やし」
製造元は時代を経て「日清シスコ」へと変わり、チキンラーメンやカップヌードルで知られる日清グループの技術と融合しました。しかし、味やパッケージのアイデンティティ(核)は決して変えませんでした。
その一方で、現代人のライフスタイルに合わせて「小分けパック」にリニューアルしたり、現代の疲れた大人たちの心に刺さる「スンスン」のようなキャラクターとコラボしたりと、「人間の行動と心理のトレンド」に寄り添う微調整を今も stealth(密か)に続けているのです。
1枚のサブレに詰まった、日本人の記憶
発売から60年。
私たちがココナッツサブレを食べて「ホッとする」のは、単に美味しいからだけではありません。私たちは1枚のサブレを通じて、昭和から令和へと続く「日本人の記憶」を一緒に味わっているからなのかもしれません。
かつてハワイに憧れた昭和の人々も、現代スンスンに癒やされている私たちも、根底にある「ときめきを求める心理」は同じ。
皆さんも今日のおやつに、そんな歴史と心理が詰まった1枚を、サクッと一口いかがですか?






